かくれぬらり

2.5次元の妄想。情報やレポはありません。感想と散文です。

BORDER

このバレンタインの良き日に「BORDER 警視庁捜査一課殺人犯捜査第4係」という恐ろしいドラマを一気に見たので語ります。ネタバレなので、これから見ようと言う気持ちが少しでもある人は絶対に読まないでください。


「BORDER 警視庁捜査一課殺人犯捜査第4係」(以下BORDER)は、2014年に放送されていた小栗旬さん主演のドラマです。
その当時私はこのドラマがやっていたことを全く知らなかった。一応ドラマ開始期に面白そうなドラマはチェックしているけれど全然知らなかった。最終回が放送された翌日、会社の同僚が「昨日のBORDER見た人いる!?誰か私と語りあって!!」と叫びながら出社してきたが、残念ながら見ていた人は一人もいなかった。でもこのたび、DVDを借りて一気にみた今、彼女の気持ちがよくわかります。「誰か、私と語り合って!!!」


というわけで、ここから先は、全話見た人を対象に、私のこのドラマに対するただの感想を書き連ねたいと思います。



その1) 本当に石川に死者は見えているのでしょうか?
石川君って結局、本当に死者が見えていたのだろうか?というのはずっと疑問でした。
「勘だよ」っていう台詞が作中に何回も登場するけれど、本当に石川の「刑事としての勘」が研ぎすまされた結果が「死者と会話ができる」という狂信に堕ちていっているパターンなのかと思ったし、死者の言葉は結局真実だったのでしょうか?中盤からは死者の言葉をあまりにも忠実に受け止める石川に不安を覚えながら見ていました。

でも本当に見えている、見えていないのいうのはこの物語においては問題ではなく、石川君が主観的に「見えている」と感じている事が重要なんですよね。



その2)「刑事としてのBORDER」を超えていく石川
私この話、死者から与えられたヒントをもとに、逆算して証拠を見つける「刑事ドラマ」なのかと思っていたのです。でも違うんですね。なんでもありの情報屋やハッカーを駆使し、時には証拠を偽装して石川さんは犯人を追いつめていく。徐々に警察組織ではなく「個人」として犯人に制裁を与えるべく動き出す事が、最終回へとつながっていくんですね。(どこがどうとは言えないけど、何となくこのドラマにはキリスト教的世界感がある気がする、そしてキリスト教において「仕事」をちゃんとするということは重要な意味を持っているような気がするので、「職務」を全うしないということが、人間のバランスを崩していく様子も興味深い。何もかも適当な考察ですまん)



その3)スーツを着た小栗旬がかっこ良すぎる
これはもう本当に久しぶりにスーツ萌えという単語を思い出す。かっこよすぎる。と同時にそのスーツにすら細かい演出が施されている事に感動。「かっこいい」という台詞が作中に何度か登場するのだけど、「かっこよさ」もまた人を神聖化する重要なファクターであると思う。



その4)友情っていいですね
良い話には良い友情が不可欠。1話から一貫してずっとバディで動いてきた立花は最終話ではほとんど登場しない。立花は本能的に石川の脳に入っている銃弾が石川に悪影響を与えている事に気付いており、繰り返し取り出す事を進めている。このバディだけがもしかしたら最終シーンの石川を止められたのかもしれないからこそ、最終シーンにいないことに意味があるのだろう。



ラスト)最終回の衝撃について語りたい
さて、ようやく最終シーンについてです。冒頭の同僚が「最終回について語りたい」と叫んでいたことから、私はこの話の最終回に「何か」がおこることを想定してずっと見ていたので、途中からは「立花か比嘉が死んで、どちらかが死者として出てくるのだろう」とありがちな予想をたててました。なので「あ、そっちか…」という衝撃がありました。まるで映画「揺れる」のような、受け手の解釈にゆだねるラストシーンなので、「押した」のが事実だったのかすら疑問です。彼は自殺したのではないだろうか?と。

事実だけみると石川の最後の行為はめちゃくちゃです。死者の言葉のみを信じ、警察の職務を全うせず、今自分を支えてくれるすべての人を裏切る行為をした。
彼が石川に「触れた」ことは、石川がすべてのボーダーを超えてしまったことを意味しているのでしょう。生と死のボーダー、正気と狂気のボーダー、悪と正義のボーダー。
今の石川に、正義は残っているのでしょうか?



その潔さ、問題提起としての作り手の覚悟に本当に素晴らしい作品だったと思います。み終わった後誰かと語りたくなる作品って大好きです。